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【眼鏡士が伝授】老眼鏡選びで失敗しないための「3つの絶対条件」とは?骨格・弾力・バランスで選ぶ快適フレーム

皆さま、こんにちは。学芸大学の眼鏡専門店、ライブラの田中です。

眼鏡士として、日々多くのお客様の眼鏡作りをお手伝いさせていただいております。

初めて老眼鏡を作る方、あるいは「今使っている老眼鏡がなんとなく疲れる」と感じている方へ。皆さまはフレームを選ぶ際、何を基準にされていますか?

「デザインが好きだから」「軽いと書いてあったから」……もちろんそれも大切です。しかし、老眼鏡(手元用眼鏡)には、近視用眼鏡とは少し異なる、「快適に使い続けるための構造的な条件」が存在します。

老眼鏡は、視線を下げて手元を見たり、頻繁に掛け外しをしたりと、独自の使い方が求められる道具です。だからこそ、ただ軽いだけではなく、「ズレない」「痛くない」「疲れない」という機能性が何よりも優先されるべきなのです。

今回は、私たちプロが自分用の眼鏡を選ぶ際にも必ずチェックしている、「本当に快適な老眼鏡フレーム」を見極める3つのポイントを詳しく解説いたします。


👃 1. なぜ「日本人の骨格」に特化したフレームが必要なのか?

まず一つ目のポイントは、「日本人の骨格に合っているか」という点です。これは、眼鏡がズレ落ちる最大の原因に関わります。

私たち日本人の顔の骨格には、欧米の方と比較して「鼻の根元(鼻根)が低く、平坦である」「頬骨の位置が高く、張り出している」「頭の形が横に広い(短頭型)」という特徴があります。

海外ブランドのおしゃれなフレームや、デザイン重視の安価なフレームの多くは、鼻が高い骨格に合わせて作られていることが多く、鼻パッドがフレームと一体化した「固定式」の場合があります。これを日本人が掛けると、十分な高さが出せず、眼鏡がズルズルと下がってしまいます。

老眼鏡が下がると、レンズの焦点位置がズレて見えにくくなるだけでなく、無意識に顎を上げて見ようとするため、首や肩の凝りを引き起こします。また、笑ったときにフレームの下部分が頬に当たり、眼鏡が浮き上がってしまうのも、骨格に合っていない証拠です。

✅ プロの選び方:

 

①テンプルに曲線でつくられた丸いふくらみのあるフレームを選びましょう。

日本人の骨格は、頭のカタチが側頭部が丸い「樽型」のような骨格です。

この骨格にあわせるには「テンプルに曲線でつくられた丸いふくらみのあるフレーム」がとても相性が良く、俗に「アジアンフィット」とも呼ばれます。

海外の眼鏡ブランドが日本市場に向けて、このデザインを採用する理由もここにあります。

 

②固定式のパッドが合わない方は「クリングス(可動式鼻パッド)」が付いているフレームを選んでください。

金属のアームで繋がれた鼻パッドであれば、私たち眼鏡士がお客様一人ひとりの鼻の高さや角度に合わせて、ミリ単位で調整することができます。また、パッドの形状も、日本人の鼻筋に合いやすい曲面のものへ交換することが可能です。「調整できる余地があること」こそが、日本人の骨格に合わせるための必須条件なのです。


🦵 2. 締め付けゼロへ。「適度な弾力」が守るあなたの集中力

二つ目のポイントは、**「テンプル(つる)に適度な弾力があること」**です。

老眼鏡を使っていて、「こめかみが締め付けられて痛い」「耳の後ろが痛くなる」といった経験はありませんか? これは、テンプルの力が強すぎるか、逆に弱すぎて安定しないために起こります。

特に老眼鏡は、読書やスマホの確認など、日常の中で頻繁に「掛けたり外したり」を繰り返す眼鏡です。硬すぎるフレームだと、掛け外しのたびにフレームに過度な負荷がかかり、型崩れや破損の原因になります。逆に、ただ柔らかいだけのフレームでは、ホールド力が足りず、下を向いた瞬間に落下してしまいます。

ここで重要なのが、**「しなやかなバネ性」**です。

顔の幅に合わせて優しく広がり、かつ元の形に戻ろうとする適度な復元力があるフレームは、頭部を優しく包み込むようにフィットします。この「包み込まれる感覚」こそが、長時間の読書でも頭痛を起こさない秘訣です。

✅ プロの選び方:

素材に注目してください。「β(ベータ)チタン」「形状記憶合金」などが使用されたテンプルは、理想的な弾力を持っています。お店で試着する際は、こめかみへの当たりが点ではなく「面」で当たっているか、そして掛け外しの動作がスムーズに行えるかを確認しましょう。この「適度な弾力」が、ストレスフリーな掛け心地を生み出します。


⚖️ 3. 重さよりも「バランス」が重要!鼻への負担を消す重心の魔法

三つ目のポイント、そして意外と多くの方が見落としているのが、「フレームの前後重量バランス」です。

「軽い眼鏡=良い眼鏡」と思われがちですが、実はグラム単位の軽さ以上に重要なのが「重心の位置」です。

老眼鏡にレンズを入れると、当然ながらフロント(前側)部分が重くなります。もし、テンプルが華奢すぎて後ろ側が軽すぎると、眼鏡全体の重心が前に偏り、「フロントヘビー」という状態になります。

この状態では、眼鏡の全重量が鼻パッドの2点に集中してしまい、鼻にクッキリと跡がついたり、痛みを感じたりします。また、前が重いと、お辞儀をしただけで眼鏡が滑り落ちやすくなります。

快適な眼鏡とは、「ヤジロベエ」のようにバランスが取れているものです。テンプルの先(モダン部分)に、あえて適度な重り(バランサー)や厚みを持たせることで、重心を耳側(後ろ側)へ移動させることができます。

こうすると、鼻にかかる荷重が耳へと分散され、実際の重量よりも驚くほど軽く感じるようになります。

✅ プロの選び方:

フレーム単体を持ったとき、前側ばかりが重くないかチェックしてください。また、テンプルの先端(耳に掛かる部分)がしっかりと太く、安定感のあるデザインを選ぶのがおすすめです。「フロントだけ重くなることがない」、前後の重量差が少ないフレームこそが、長時間掛けても鼻が痛くならない魔法の構造なのです。


🤝 最後に:良いフレームとプロの技が出会うとき、最高の視界が生まれる

いかがでしたでしょうか。

「日本人の骨格に合うこと」「適度な弾力があること」「前後の重量バランスが良いこと」。

この3つの条件を満たしたフレームは、単なる視力矯正器具を超えて、あなたの生活の一部として溶け込んでくれます。

しかし、どんなに優れたフレームを選んでも、最終的な仕上げは私たち眼鏡士による「フィッティング(調整)」にかかっています。

お客様の耳の高さ、頭の形に合わせて、フレームの持つポテンシャルを最大限に引き出す調整を行って初めて、世界に一つだけの「最高の老眼鏡」が完成します。

これから老眼鏡を作る方は、ぜひこの3つのポイントを頭の片隅に置いて、フレームを選んでみてください。そして、迷ったときは遠慮なく私たちにご相談ください。あなたの目と骨格にぴったりの一本をご提案させていただきます。

快適な老眼鏡で、読書も趣味も、もっと自由に、もっと楽しく。

皆さまの視生活がより豊かになることを、心より願っております。