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【眼鏡士のこだわり】なぜライブラの視力測定は「1時間」もかかるのか?その理由をお話しします

皆さま、こんにちは。学芸大学の眼鏡専門店、ライブラの田中です。

初めて当店にいらしたお客様に「視力測定には、たっぷり1時間ほどお時間をいただきます」とお伝えすると、驚かれることがよくあります。

「えっ、そんなにかかるの? 今までの眼鏡屋さんは10分か15分で終わっていたけれど……」

その反応は、ごもっともだと思います。

もちろん通常であれば20分~30分で終わるケースが多いですが、お客様の眼の状況により、最近では1時間近くいただくケースも多くなりました。

忙しい現代において、1時間という時間は決して短くはありません。しかし、私たちライブラがこの時間をどうしても譲れないのには、現代人特有の「目の事情」と、一級眼鏡士としての「責任」があるからなのです。

今回は、なぜ私たちがこれほどまでに時間をかけて検査を行うのか。その舞台裏にある、本当に快適な眼鏡を作るための「3つのプロセス」について、詳しくお話しさせていただきます。


【眼鏡士のこだわり】なぜライブラの視力測定は「1時間」もかかるのか?その理由をお話しします


📱 1. スマホ時代の目は「カチコチ」?現代人が抱える見えない緊張

まず、検査に時間がかかる最大の理由は、皆さまのライフスタイルの変化にあります。

現代を生きる私たちは、スマートフォン、パソコン、タブレットと、起きている間中ずっと「近くの画面」を見続けています。

人間の目は本来、遠くを見る時はリラックスし、近くを見る時は水晶体を膨らませてピントを合わせるために、目の筋肉(毛様体筋)を緊張させます。

昔であれば、近くを見るのは読書や手仕事の時間だけでした。しかし今はどうでしょうか。通勤電車でスマホ、仕事でパソコン、家で動画……。目は一日中、筋肉に力を入れっぱなしの状態です。これは例えるなら、**「重い荷物をずっと持ち続けて、腕がプルプル震えている状態」**と同じです。

この「カチコチに緊張した目」のまま、パッと機械を覗いて視力を測るとどうなるでしょうか?

筋肉が凝り固まって戻らなくなっているため、本当はそこまで目が悪くないのに、近視が強く出すぎてしまったり(仮性近視)、乱視の軸がズレて測定されたりするのです。

この「偽りの度数」で眼鏡を作ってしまうと、「よく見えるけど、頭が痛くなる」「夕方になると酷く疲れる」という眼鏡になってしまいます。だからこそ、私たちはまず、この「目の緊張」を解きほぐす工程から始めなければならないのです。


☁️ 2. 目の深呼吸、「雲霧法(うんむほう)」で本来の度数を探し出す

では、どうやって目の緊張を取るのでしょうか?マッサージをして直接ほぐすわけにはいきませんよね。

そこで私たちが活用するのが、**「雲霧法(うんむほう)」**という検査テクニックです。

これは文字通り、「目を霧の中にいるような状態にする」方法です。

具体的には、検査の初期段階で、あえて強めのプラスレンズを装用していただき、目の前をぼんやりとボヤけさせます。

「えっ、全然見えないんですけど」と不安になるかもしれませんが、実はこれが重要なのです。

人間は、対象物がハッキリ見えそうになると、無意識に「ピントを合わせよう!」と目に力を入れてしまいます。しかし、雲霧法で強制的にボヤけた状態を作ると、目は「あ、頑張っても見えないや」と諦めて、ピント調節をサボり始めます。

この**「目がサボっている状態」こそが、筋肉の力が抜けた、あなたの目の「リラックス状態(すっぴんの状態)」**なのです。

凝り固まった筋肉がフワッと緩むまで、この状態でじっくりと時間を置くこともあります。この「目の深呼吸」の時間をしっかり取ることで初めて、過度な近視や隠れた遠視といった「本来の目の度数」が姿を現します。

1時間の検査の多くは、実はこの「緊張を取り除くプロセス」に費やされていると言っても過言ではありません。


🚶 3. 数値だけでは分からない。「装用テスト」が快適さの最終関門

雲霧法で正確な数値が出ました。では、すぐに「はい、この度数で作ります」となるかというと、そうではありません。

ここからが、ライブラが最も大切にしている**「装用テスト(体験装用)」**の時間です。

検査椅子に座って、静止した状態で「C」のマークが見えることと、その眼鏡を掛けて「生活できること」は全く別の話です。

特に、度数を変えた場合や、初めて乱視矯正を入れた場合、あるいは遠近両用レンズの場合、空間の見え方に変化が生じます。

  • 「床が浮き上がって見えませんか?」

  • 「壁のラインが歪んで見えませんか?」

  • 「店内を歩いてみて、フワフワする酔うような感覚はありませんか?」

私たちは、仮のレンズを組んだ枠(テスト枠)を掛けていただき、実際に店内を歩いたり、スマホを見たり、窓の外の景色を見たりしていただきます。これを最低でも10分〜15分、じっくりと行っていただきます。

なぜなら、脳が新しい見え方に慣れるには時間が必要だからです。最初は「よく見える!」と感動しても、10分歩いているうちに「なんだか気持ち悪いかも……」と感じることはよくあります。

この**「生活の実感」**を確認せずに作ってしまうと、結局「疲れて掛けられない眼鏡」になってしまいます。お客様が「これなら一日中掛けていられる」と確信できるまで、私たちは何度でも度数を微調整し、一緒に確認を行います。


🤝 4. 「見える」のその先へ。1時間はあなたを知るための大切な時間

いかがでしたでしょうか。

ライブラの「1時間の検査」は、単に視力という数値を測るだけの作業ではありません。

 

  1. スマホなどで凝り固まった「目の緊張」を解きほぐし、

  2. 雲霧法で「本来の目の力」を見つけ出し、

  3. 装用テストで「生活の中での快適さ」を確認する。

 

この工程を丁寧に積み重ねることで初めて、あなたの目に優しく寄り添う「本当に快適な一本」が完成するのです。

「最近、目が疲れやすい」「眼鏡を変えてもスッキリしない」

そんなお悩みをお持ちの方こそ、ぜひ一度、ライブラにお越しください。

私たちは、あなたの目の声に耳を傾けるための「1時間」を、いつでも大切にご用意してお待ちしております。